あの場所で僕らが生きていた頃、世界は無限大だった

"ポップな"魔界の酔いどれ詩人Yukoの言葉たち

あの場所で僕らが生きていた頃、世界は無限大だった

小さな頃、夢を抱いていた。
とてつもなく無神経で傲慢な夢を。

それは時の流れとともに消え、夢など思い描いてはいけないと感じるようになった。
絶望から逃げるための希望を夢と呼び、調教されたサーカスの獅子の如く吠えてみせた。
ショーが終わると、臆病な獅子は独房の中で空想に耽っていた。

ある時期から毎晩同じ夢をみるようになった。
中世ヨーロッパのコロッセオのような戦場が広がり、天使も悪魔も、兵士も娼婦も、あらゆるものが入り乱れていた。
自分には翼があったようだけれど、それはどこまでも飛べる翼ではなかった。
不可視の鎖に繋がれたように、天高くそびえ立つ要塞が目の前にあるように、得体の知れない畏れだけがそこにあった。

世界はいつからこんな風になってしまったのだろう。
そう思ったけれど、それを変えられるような崇高な精神も屈強な力も持ち合わせていない。

脆弱で非力な生き物は考える。
どこまでが現実で、どこからが夢かなんてわからない。
もしかしたらこの世界そのものは仮想であり、どこかで何者かが管理しているのかもしれない。

だとすれば、これはなんと小さな世界なのだ。

もともと世界は無限大ではないか。

あの場所で僕らが生きていた頃は。